ロンドンのガイズ・キングス・セントトーマス大学歯学部の1年間の授業料です。

  英国人学生    2800ポンド(約56万円)
  海外からの学生 17375ポンド(約347万円) 英国人学生の約6倍です。
  
 イーストマン歯学研究所は大学院大学ですが、ここの授業料は講座によって異なっています。40%の学生が海外からの大学院生で学生の出身国はアジア・アフリカ・中近東・南アメリカなど50カ国以上に及んでいます。

  例えば矯正学3年目では
  英国人学生    2700ポンド(約54万円)
  海外からの学生  21600ポンド(約432万円)英国人学生の約8倍です。

 英国の大学は海外からの学生に対して彼等への奨学金や授業料減額などの配慮は行いません。むしろ高額な授業料の請求をします。これは海外からの留学生誘致政策をとる政府の指示によるものです。

 外資に乏しい発展途上国の人にとって何百万円もの金額は大変な負担だと思います。「ヨーロッパ諸国は旧植民地国に大学院コースを作らせない。高等教育はヨーロッパまで来て受ければいいと考えている。そうすることで旧植民地国の上流社会階層とのつながりができるし、彼らを支配できる。」という欧州の某教授の意見がありました。

 私はヨーロッパの大学に多くの大学院生が集まり、よく言えば国際的になる背景にこのような母国に大学院コースがない国々の存在という背景があるように思います。ドイツは授業料が安いために奨学金留学生はドイツへ行き、旧英国領の資産のある子弟は英国に来るのではないでしょうか。


 英国ニュースダイジェストの1999年7月8日号4頁をみると英国政府のブレア首相がロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで講演し、国内の大学と成人教育への留学生の誘致に力を入れ、年間7億ポンドの授業料増収を目指す方針を示した記事が掲載されています。

 96ー97年の実績では英語圏の主な4カ国に留学した学生約60万人の内訳は、米国68%、英国17%、オーストラリア10%、カナダ5%でした。英国に留学した学生の内訳は、欧州連合(EU)出身者が45%、その他が55%でした。

 具体的な英国の政策として
 1)学生ビザの申請と留学中の更新手続きの簡略化
 2)学生労働許可発行基準の緩和          などが挙げられています。


 英国と日本では大学の職名が異なっています。日本は米国の標記方法に従っています。また、米国と英国の教授職の在り方の違いというものがあります。米国ではPhD資格がなくても大学教授になることができます。特に臨床系の教授はPhDをもっている人が少ないことに気が付かれると思います。
 一方、英国やヨーロッパの大学では大学病院の診療部門の部長であっても、教授でない人は多くいます。ヨーロッパの大学では教授になるためには学問的な業績が求められているようです。


英国 日本 日本の職名の英語標記
Professor 教授 Professor
Reader 助教授 Associate Professor
Senior Lecturer 講師 Assaistant Professor
Lecturer 助手 Research Associate


 Lecturerから大学院生の研究指導を行っていますから、これが日本の助手に相当するのではないかと思います。Readerの肩書の人が少ない背景にはSenior LecturerからProfessorへ昇格する事例が多いからではないでしょうか。

 病院では、Consultantという職名が最上級職の医師を示しています。専門医資格を取りConsultantを目指すようです。また研修を修了した医師をStaff Gradeといいます。

 研修医としての名称は所属する病院により異なり以下のようになっています。
 ・VT: Vocational trainee
・SHO:Senior House Officer post
・HO: House Officer post
・CDS:Community Dental Service


 英国内の大学歯学部数は13、大学院大学は2です。英国とアイルランドの歯学教育機関に関しては、http://www.derweb.ac.uk/を参照されると一覧となって紹介されています。すべての大学がホームページを所有しており、そのホームページには大学紹介だけではなくカリキュラムやシラバス、学生の成績の評価方法、評価基準も公表されています。ただ詳細なカリキュラムへのアプローチは通常は学内からに限られています。
 
英国とアイルランドの大学歯学部 

1. The Queen's University of Belfast School of Dentistry
  学生定員27名。Queen's大学の一部で英国の歯学部の中で最も小規模の大学であるが、教育レベルの高さと教官と学生の関係がいいことで知られている。北アイルランド出身の学生が多いが政治的な背景はない。歯学部はRoyal Victoria 病院内にある。この歯学部では第三学年の最初から臨床実習が始まる。大学院進学は卒業生のうちの10ー15名。

  所在地:Shool of Clinical Dentistry, The Queen's University of Belfast, Royal Victoria Hospital, Grosvenor Road, Belfast, BT 12 6BP, Northn Ireland. Tel: 01232 240503 ext. 2733/2734 http://www.qub.ac.uk/cd/cd.htm

2. The University of Birminghan School of Dentistry
  学生定員65名。学生はWest Midlandsの広い範囲の出身者が多い。この歯学部病院の外来患者数は多く、そのため様々な歯科治療が行われている。臨床実習は第三学年の後半から始まる。2年終了後にBScコースで学習することができる。ヨーロッパの他大学へ交換学生としていくことができる。

  所在地:The Dental School, St Chad's Queensway, Birmingham, B4 6NN. Tel: 0121 236 8611, Fax: 0121 625 8815. http://www_dentistry.bham.ac.uk/

3. Bristol Dental School
  学生定員52名。Unievrity of Bristolはイングランドで初めて女性を入学させた大学です。60の講座、15の研究センター、6つの学部があり、学生総数は9776名大学院生2152名(男性6140、女性5788名)の合計11928名です。海外からの学生1140名(男性577名、女性563名)。
   歯学部学生は最初の2年間は医学部で教育を受けています。平行する教育として、2年目の終わりに希望する学生はFaculty of Scienceで学びBSc Honours Degreeを修得することもできます。ヨーロッパの他大学歯学部での交換学生になることができる。Hannover大学との姉妹校である。

  所在地:Dental School, Lower Maudlin Street, Bristol, BS1 2LY. Tel: 0117 928 4308, Fax: 0117 928 4150 http://www.dent.bris.ac.uk/

4. University of Dundee
学生定員25名。歯学部入学条件を満たしていない学生のための1年間の予備コースがある。学生はスコットランドや北アイルランドの出身が多い。第二学年から徐々に臨床実習が開始される。2年終了後にBScコースで学習することができる。ヨーロッパの他大学、フランス、イタリアへ交換学生としていくことができる。

  所在地:Dental School, Park Place, Dundee, DD1 4HN.
http://www.dundee.ac.uk/dentalschool/

5. Gasgow Dental School
  学生定員70名。英国で二番目の規模の歯学部である。大都市に位置しているために学生の出身は市内および周辺の学生が多い。preーclinicalコースは主に本学の方で教育される。受診する患者数も多く、様々な治療が行われている。臨床実習は第二学年から開始される。2年終了後にBScコースで学習することができる。ヨーロッパの他大学歯学部へ交換学生としていくことができる。

  所在地:Gasgow Dental Hospital and School, 378 Sauchiehall Street, Glasgow, G2 3JZ Tel: 0141 211 9600 Fax: 0141 331 2798 
http://www.gla.ac.uk/Acad/Dental/

6. The Guy's, King's college and St Thomas' Hospital Medical & Dental School

  学生定員150名。ロンドン市内に英国最大の医学部歯学部でテムズ川沿いのタワーのようなビルである。1998年8月1日にキングスカレッジロンドン(King's College London)とガイズカレッジとセントトーマス病院医学部歯学部(United Medical and Dental School of Guy's and St Thomas's: UMDS)は合併した。キングスカレッジは19世紀に設立された大学で、ガイズとセントトーマスは1980年の早期に合併してUMDSとなっていた。これによって学生総数は15300人になった。
   1999年からの最初の学生は国際的に新しくなったスタッフによって教育と研究が行われている。キングスカレッジの教育の特徴は少人数制の教育にある。一学年の医学部の学生数は330名、歯学部の学生数は150名である。関連病院はイングランド南東部全域に広がっている。2年終了後にBScコースで学習することができる。ヨーロッパの他大学へ交換学生としていくことができる。

  所在地:GKT Dental Institute, St Thomas Street, London Bridge, London SE1 9RT. http://www.smd.kcl.ac..uk/

7. The Leeds teaching Hospitals
  定員55名。1985年に歯学部の建物は新しくなった。英国内でもここの医学部・歯学部の施設は大きなものである。学生の多くは北部、中部のイングランド出身である。ここの卒業生の卒業資格は英国の他大学と異なりBChDと称されている。基礎医学と臨床歯学が統合されて教育されている。臨床実習は第二学年の2学期から始まる。医学については医学部での教育が行われている。2年終了後にBScコースで学習することができる。

  所在地:Leeds Dental Institute, Claredon Way, Leeds, LS2 9LU Tel: 0113 2336 199 http://www.leeds.ac.uk/dental/dental.html

8. The University of Liverpool School of Dentistry
学生定員57名。この大学の教育コースは基礎医学と臨床歯学とが統合されて新しい教育システムになっている。ヨーロッパにおける歯学教育の指導的立場にある。医学部歯学部は近代的なビルの中にある。第一学年から臨床実習を始めている。3段階にわかれた教育をしている。第一段階は最初の2年間で基礎医学を教えながら模型実習と患者の簡単な治療を行っている。第二段階は3、4年生で、臨床実習をしながら臨床歯学・医学の教育を受ける。第三段階は最終学年で臨床実習を主体としている。Dental Therapist, Dental Hygienist, Dental Nurseの養成学校併設されている。2年および4年終了後にBScコースで学習することができる。

  所在地:School of Dentistry, Pembroke Place, POBox 147, Liverpool, L69 3BX. Tel: 0151 706 5201, Fax: 0151 706 5845 http://www.liv.ac.uk/~luds/front/index.htm
 
9. Mancheter Dental School
  学生定員65名。1884年に設立された歯学部で、ここの特徴は学生をグループにわけてProblemーsolving based learningシステムを学生教育に導入していることである。基礎医学と臨床歯学・医学は統合され5年間を通して教育される。基礎医学・臨床医学は隣接した医学部で教育される。臨床実習は第二週からチェアーサイドでの見学という形で始まる。2年終了後にBScコースで学習することができる。ヨーロッパの他大学歯学部へ交換学生としていくことができる。Nijmegen, Hollandと姉妹校である。

  所在地:Turner Dental School, Univerity Dental Hospital of Mancheter, Higher Cambridge Street, Manchester, M15 6FH. Tel: 0161 275 6671/6642 http://www.den.man.ac.uk/

10. Newcastle Dental School of Faculty of Medicine.
  学生定員70。英国内で最も新しくできた歯学部である。教育コースは予防歯科患者の前進的な管理に主眼が置かれている。第三学年から臨床実習が開始されている。2年終了後にBScコースで学習することができる。

  所在地:Dental School, Framlington Place, Newcastle Upon Tyne, NE2 4BW Tel: 0191 222 6732/8347, Fax: 0191 222 6137
http://www.ncl.ac.uk/~nresdent/

11. University of Sheffield School of Clinical Dentistry
  学生定員50名。 基礎医学は医学部で教育を受ける。第三学年から臨床実習に入る。予防歯科に重点が置かれている。希望者は第二学年の試験を合格した後に1、 2年間BMedSci、BScの資格をとるための勉強を行うことができる。2年終了後に BMedSci, BScコースで学習することができる。ヨーロッパの他大学歯学部(Dublin, Madrid, Stockholm)へ交換学生としていくことができる。

  所在地: School of Clinical Dentistry, University of Sheffield, Claremont Crescent, Sheffield, S10 2TA. Tel: 0114 271 7801 Fax: 0114 279 7050
http://www.shef.ac.uk/uni/academic/
     
12. St Bartholomew's and the Royal London School of Medicine and Dentistry
  学生定員55名。ロンドン市内東部に位置している。従来の教育システムよりも学生主体の学習に重点を置いている。最初の5学期で基礎医学が教えられ、前半は全身に、後半は頭頚部へ重点がおかれる。第三学年の後半から臨床実習が行われる。

  所在地:St Bartholomew's and the Royal London School of Medicine and Dentistry, Turner Street, London, E1 2A. http://www.mds.qmw.ac.uk/

13. University of Wales College of Medicine Dental School
  学生定員55名。1945年のTeviot Committeeは英国内の歯学部学生を毎年650人から800人入学させることを提案した。この目標を達成するためにいくつかの大学で増築やCardiffでは歯学部が新設された。
   1966年に設立され、学生はウエールズ地方出身者が多い。予防歯科に重点がおかれ、統合された教育が行われている。第一学年はウエールズ大学で教育をうけ、第二学年からCardiffの歯学部で教育を受ける。第二学年から臨床実習に入る。

  所在地:Dental School, University of Wales College of Medicine, Health Park, Cardiff CF4 4XY. Tel: 01222 744227 http://www.uwcm.ac.uk/uwcm/ds/

14. University Dental School & Hospital, Wilton, Cork, Ireland
  学生定員55名。このうち4名は海外からの学生である。海外からの学生の入学は政府からの割当である。歯学部は1913年に設立された。1983年にWiltonの医学部大学病院の側に歯学部病院が新しく建設された。最初の2年間は基礎医学について医学部での教育を受ける。その後の3年間は歯学部で臨床実習を受けながら教育を受ける。

  所在地:Cork Dental School and Hospital, Wilton, Cork, Ireland. Tel: 353 21 545100, Fax: 353 21 343561 http://www.ucc.ie/ucc/denthosp/index.html

15. University of Dublin, Trinity college School of Dental Science
  南アイルランドの北部に位置する。トリニテイ・カレッジ・ダブリンはヨーロッパにおける歯学教育の模範的施設だと評判の大学である。歯学部長のShanley学長はヨーロッパの歯学教育に関して指導的立場にある。Problem based learningをいち早く導入し、その教育方針にしたがって歯学部は改築され最新の設備が整っている。歯学部の建物は1895年に建築されているが、その建物にかぶさるように建築され、通りに面した建物の外観は古い時代の建物をいかし残している。

  所在地: Dublin Dental Hospital, Lincoln Place, Dublin, Eire
http://www.tcd.ie/Dental_School/
 
16. Eastman Dental Institute for Oral Health Care Sciences

  ロンドン市内にある大学院大学。ロンドン大学の一つを構成しています。歯科領域の学術雑誌の掲載数は英国内の歯学研究機関の中で最も多く、WHOの協同研究機関であり、米国NIH、欧州からの研究助成金を受けています。英国内に発行される学術雑誌の編集委員をしているスタッフが多くいます。

  規模の大きな施設ではありませんが、約200名の大学院生が在学おり、その40%は海外からの学生でり50カ国以上の国からきています。歯科病院が併設されており、歯科衛生士、歯科看護婦、歯科治療士、歯科技工士の学校も学内にあります。

  臨床系の大学院生がほとんどであり2年間の教育でMaster of Clinical Science (MClinSc)の修士号。研究系では1年間のコースでMaster of Science (MSc)、 Master of Philosophy (MPhil)の修士号と3ー4年間のコースでDoctor of Philosophy (PhD)の博士号を修得することができます。

  学費は高額で1年間の授業料が講座によって異なりっていますが、100万円から300数十万円の範囲です。学生への奨学金制度はありませんが銀行へのローンの紹介を行っています。

  所在地:256 Grays Inn Road, London WC1X 8LD
Tel: 0171 915 1038 Fax: 0171 915 1039 http://www.eastman..ucl.ac.uk