歯学部入学を希望する学生は多く1996年には12913名の応募者がありました。一次選考で2534名になり、さらに面接を含んだ最終選考が行われ、最終的な合格率は応募者の5%になっています。競争率の高い学部です。女性が志願者の半数以上を占めるようになってきたのが最近の歯学部での特徴の一つです。
 一次選考基準は全国共通試験のthe Universities and Colleges Admissions Service (UCAS)が3Aーlevel, 2Aーlevel, 2AS(Advanced Supplementary)が等しく受験可能です。受験科目は3科目です。全ての歯学部は化学が必須科目で、Aーlevelでない場合はASーlevelであることが要求されます。第二選択科目として奨励されているのが生物学または生命科学に関連した科目です。第三科目は受験者の希望により科学でない科目でもかまいません。外国語の試験は要求されていません。
 B型・C型肝炎のキャリアでないことの診断書が歯学部受験者には要求されます。

 受験生は、the Universities and Colleges Admissions Service (UCAS)の試験結果を参照して受験申込書を大学へ提出することになります。高等学校長は受験生に関する内密の内申書を提出します。歯学部はUCASの受験申込書を元にして、面接を行います。

 国際大学入学資格試験とヨーロッパ大学入学資格試験の合格者。英国の歯学部研究所や海外の歯学部研究所で名誉学士を有している受験教科の成績優秀な者も受験可能です。
 海外の高等学校の卒業生のための特別な試験は用意されていません。受験に関る費用についても奨学制度などはないようです。しかし、Leed大学の学生募集要項<http://www.uwcm.ac.uk/uwcm/ds/adm.htm>をみると、海外からの学生の入学の条件としてまず入学定員が限られているために母国に歯学部がない学生を優先するという規定が見られます。次に英語力についての条件がいくつか述べられてあり、TOFELの点数が最低550点が要求されています。

 最終的な入学試験合格の判定は各大学に任されており、書類上の二次選考に合格した学生には歯学部・附属病院の見学の後に面接試験が行われ、「学力と意欲のある学生」を選抜しているようです。
 日本のような高等学校からの推薦入学制度はありません。また、学士入学制度もありません。しかし医学部を卒業している受験生には歯学部への入学が優先され教育期間は短縮されています。

表1.英国での歯学部志願者数

1996年 1995年
歯学部志願者総数 12913 13826
一時選考合格者数 2534 2540
英国学生 2249 2181
男性1237 男性1182
女性1012 女性 999
海外学生 285 359
男性130 男性167
女性155 女性192
最終選考合格率 5.0% 5.4%

参考資料:著者名John Handley, 書名Getting into Dental School. 出版社Trotman and Company Limited, 1996年初版発行, ISBN 0 85660 335X. http://www.ucas.ac.uk


 英国の歯学教育システムは、以下のように構成されています。

 ・大学教育(Undergraduate)
 ・卒後教育(Vocational Training)
 ・大学院教育(Postgraduate)
 ・卒後資格修得コース(Postgraduate Degree & Diploma)
 ・専門医資格修得コース(Specialists in Dentsitry)
                      
 英国の歯学教育は13の歯学部と2つの大学院大学で行われています。歯科医師数はEU圏内の他の国の歯科医師の移住の増加もあり卒業生数との間に不均衡が生じていました。歯科医師数の均衡を保つために3つの歯学部の閉鎖が行われました。

 英国内で閉鎖された歯学部は、(1)Royal Dental Hospital (Leicester Square, London), (2) University College (London), (3) Edinburgh (Scotland)の3大学です。Edinburgh大学は歯学部は廃止されましたが大学院を残しました。

 さらに98年にロンドン市内のKing's collegeとGuy's & St Thomas's collegeが合併し、The Guy's, King's college and St Thomas' Hospital Medical & Dental Schoolになりました。

 1991年に医学部・歯学部の教育期間は5年間に延長されました。それまでにもいくつかの大学では5年間教育が行われていました。1993年から卒業生は一般歯科医療の技術向上のためにVocational Training (VT)と呼ばれる1年間の卒後教育を義務として受けなければいけないことになりました。

英国では教育過程を言い表す時に、歯学部教育 (Undergraduate education)をThe First Five Years (最初の5年間)、卒後教育をThe Next Two Years (次の2年間)と表現しています。


 歯学教育の基本方針は、歯学教育の監督官庁であるGeneral Dental Council (GDC)によってThe First Five Years. The Undergraduate Dental Curriculumとして文書化されています。ここに記載してある147項目の基本方針に逸脱しない範囲での裁量が各大学に任されています。その裁量権があるために各大学は異なった方法で教育を行っており、10年毎に指示項目が順守されているかどうかの評価がGDCによって行われています。

 歯学部卒業生はBachelor of Dental Surgery (BDSまたはBChD。BChDはLeeds大学卒業生に対してだけ使用)の資格を修得します。日本でよく用いられるDDS(Doctor of Dental Surgery)は米国の歯科医師の略称です。

 5年間の教育期間は前半2年間のthe preーclinicalと後半3年間のthe clinicalの二つに大別され第二学年の後半で重なり合い限られた限度での臨床実習が始まり、基礎医学、臨床歯科学、臨床実習が平行して教育されていきます。the preーclinicalコースの教育は医学部において行われている大学もいくつかあります。
 解剖学実習は毎週1回のペースで2年間継続して行われます。また日本で行われている石膏棒を用いた歯型彫刻は行われていません。