性暴力を根絶するために |
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性暴力被害にあった女性のご両親、ご家族、司法関係者に知ってもらいたいことがあります。 性暴力には、以下のような状況があります。 (1)強姦、輪姦、強制わいせつなど、単発性の性犯罪 (2)家庭内性暴力 実父や義父、兄弟による、小学生や中学生の頃からの継続された強姦。山口でも何人もこうした男がいます。 “最初はお父さんがすることだから悪いことじゃないと思っていた”という言葉を聞いたことがあります。気 がついたときの悲惨さ・・・。 (3)心理的に拘束された性的奴隷 時代とともに、テレクラ、ツーショット・ダイヤル、出会い系サイト、次々と性犯罪のきっかけは低年齢化し、 身近になっています。マスコミの援助交際という造語も、被害者が名乗りでにくい社会状況を作り出してい ます。 ここでは、もっとも悪質で、常習犯が多い(3)について述べたいと思います。 若い女性を心理的に拘束し、長期間に渡り、性的奴隷とする男たちがいます。これは都会の話ではなく、この 山口県での話です。この男たちには共通した特徴や手口があります。 特徴の一つは、加害者の男たちには、社会的な地位があり、55歳、56歳、62歳、67歳などという高齢者の男が多い こと。若い女性は、安心してしまい、その言葉巧みな誘いに応じてしまうのです。 一方、相手の女性は10代か20代前半で、まだまだ、社会的に未熟で、判断能力に乏しい。そして、まじめな女性ほど、 ひっかかります。 被害にあっている女性たちは、誰にも相談できず、ついには、追いつめられて自殺を選びます。多くの場合、自殺未遂 がきっかけで、こうした事件が発覚するのです。そして、未遂で終わらなかった人もいます・・・。 私が危惧するのは、こうした女性が思い余って親や警察に相談しても、なかなか、彼女たちの言葉を信じてもらえな い現実があることです。 「男と会うのが嫌なら、呼び出されても、会わなきゃいいじゃないか?」 「一度だけならともかく、なんで、1年以上も関係が続くんだ?」 「いろんなものや、お金をもらっているじゃないか?」 「楽しそうに一緒に写真に写っているじゃないか?」 「つじ先生、あの子の言ってること、おかしくないですか?」と言われます。 「なぜ抵抗しなかったのか?」 抵抗して殺された女性がいったい、どのくらいいると思いますか? 大久保清事件だけで、抵抗したばかりに殺された女性が何人いましたか? 抵抗していないのではないのです。その瞬間、なんとか自分の生命を守りたい、生き残りたい。つまり、被害を最小限 にとどめるためには、その場で抵抗しないことも女性に残された選択肢なのです。 性暴力被害者をSurvivor(生き残った人)と表現する理由がここにあります。 男たちの心理的拘束の手口を知って、彼女たちの信じがたい話を信じてもらいたいと思います。男たちは実に狡猾で 悪質です。 男たちの手口 1. 女性に自責の念を植え付ける。 「お前にも悪いところがある」と男は言います。出会い系サイトで知り合う。当初交際を承諾。拒絶の意志を示せな かった。食事をご馳走になっている。金品を受け取った。 最初の2、3回は会っても何もしません。食事や、ちょっとした何か、こずかいなどを受け取らせます。そして、親し くなって、自宅の場所や、家族や学校のことを聞き出した頃に、無理やりホテルに連れ込み、強姦します。 金品を受け取っているという弱み、さらに、自分の父親と同じ世代、おじいさんと同じ世代の男とセックスした。何 度も会っている。親に知られたら、親や兄弟は、どう思うだろう? 売春と思われても仕方ない、ということになり ます。 いつか自分に飽きてくれる。我慢して、屈辱に耐え、彼女たちは、その日を待つのですが、娘や孫の年齢の女性と、 お金を支払うこともなく、日常的にセックスできるのです。男は、なかなか手放そうとはしません。 2. 女性の孤立化 1)「こんなことが世間に知られたら一生後ろ指さされて暮すことになるぞ」、「まともな結婚などできないぞ」と 脅しをかけます。 2)「お前の家に電話して親や兄弟にばらしてやろうか」 親に知られれば困るのは加害者の方ですが、そんなことをしても恐くも何ともないぞという脅しです。 呼びだしを無視すると、自宅に繰り返される無言電話で心理的に追い詰め、呼び出しに応じさせます。 3)自宅を確認する。 「お前の家を見たよ。お母さんも見たよ。近所のお店屋さんにも行って世間話をしてきたよ」。 “この男は家の近くまで来ている。近所に知られたら家族に迷惑をかける。私一人が耐えればいい”という心理 状態になります。 4)毎日電話連絡をとらせ、行動を監視する。 毎晩、同じ時間に電話させる。なかには、朝、昼、夕方、夜と、毎日何度も携帯電話に、2年間も連絡させてい た男もいます。 3. 女性の無力化 1)恐怖心を植え付ける。 別れ話で逆上。暴力団関係者との親交を誇示。 “電話の声を聞くだけで、怖くて体が震える。悔しいけれど、震えがとまらない”。彼女たちは、似た体格の男 をみただけでも恐怖を感じます。 2)男の社会的な地位 「私に逆らって警察に行って、何を言っても、お前のような小娘の言うことなど、誰も信じるはずがない」と脅 します。 3)執拗なストーカー行為 この男からは、自分一人の力では逃れられない。 “気が済むようにさせておけば問題はない。この男の機嫌を損ねると何をしでかすかわからない。親や兄弟にも 迷惑がかかる。” こういう心理状態になると、心理的拘束は成功です。 4)男との年齢差 年齢差がありますから、どうみても恋愛とは思えない。親に援助交際(売春)していたと誤解されるのが怖いの です。 言いなりになるしかない。抵抗を諦める。そして、性的奴隷の日々が始まります。仕方なく、笑顔で、一緒にい るようになるのです。 (1)レストランなどで楽しげに食事。 (2)観光地で笑顔の写真 4. 屈辱的な性行為の強要 1) こんなことをされても抵抗できない自分。 性欲のはけ口の物として扱われ、人間としての尊厳や、自尊心を否定された自分。 こんなにも弱い自己の存在の否定の願望 → 希死念慮、自殺企図 “こんなことをされる弱い、汚れた自分の存在を否定したい” “こんな生活を続けるくらいなら死んだ方がまし” 2)生活に実感がなくなります。 男に捕まり、将来に夢がなく、毎日の生活に現実感がない。 “死ぬことが怖くない。”という心理状態になっていきます。 5. 否定的な自己評価が、彼女たちの立場をさらに悪くします。 1)自暴自棄で、反社会的な生活:無断外泊、飲酒、喫煙、車輌暴走 2)アルコール依存:悪夢が怖くて眠りたくないので、酔いつぶれて寝る。 お酒を買うお金がないので、誘われれば誰とでも飲みにでかける 3)外見に無頓着で、黒や灰色のモノトーンな色彩の服装。 4)なにか影のあるような雰囲気 摂食障害(過食、吐き戻し)、繰り返される自殺未遂、引きこもり、自傷行為も出現してきます。親は、娘のことが、 まったく理解できなくなります。 被害者の女性たちは、家族にだけは知られたくないと思っています。学校は卒業します。友達とは別れることが できます。だが、家族との付き合いは切れないのです。親や兄弟たちから、一生、ふしだらな女性と見られるのが怖いの です。こういう男たちは、その心の隙間に、つけ込みます。 過食・吐き戻しなどの摂食障害、無断外泊、自暴自棄な生活、未成年での飲酒喫煙、外見や、ぶっきらぼうな言葉遣い、 雰囲気は何か影があるようで変です。 こうした外見的なことは、両親や、司法関係者の視点からみると、明らかに、女性に不利に働きます。 だが、どうか、ここで述べたような心理的背景が、彼女たちにあることを理解して頂き、彼女たちの立ち直り、加害者 の処罰、性暴力の根絶に、ご理解とご支援をお願いしたいと思います。 最後に、裁判所の判決文を引用します。 「女性にも落ち度はあるが、ここまでひどい目にあわされる言われはない。」。 |
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