EUの結成以来、ヨーロッパ各国間で歯学教育に関しての論点は以下の2点でした。

 1)国境を越えた歯科医師の個人的移動を認めること
 2)各国間の教育格差を認識すること

 ヨーロッパ諸国にはやがて貨幣も共通化し益々国家間の障壁が無くなっていく将来が予測されるために歯科医師の人的交流がこれから益々頻繁に起ることが予期されています。そのため、歯学教育の共通した基準を作成し、各国間の歯科医師の能力を同一化させていこうという基本方針があるようです。

 しかしながら、現状では強制力をもった指導を行うことが困難であるために、他国の歯学教育の現状を各国が閲覧できる状態にして各国の自己評価に基づく改善を期待しています。

参考資料: John Scott. Editorial. Convergence in dental education: The DENTED project.
European Journal of Dental Education 3: 1-2, 1999.
    
     
 教育格差については、例えば、患者を対象とした直接的な臨床実習が非常に少ない国々とその逆に臨床実習が非常に多い国々があります。医学との連携についても密接な連携がある国々とその逆にそういう機会のない国々もあります。また北欧のように口腔衛生思想が国民に普及したために歯科疾患発生頻度が低くなった国々では歯科受診患者が少なくなり歯学部学生教育に支障が出ています。

 このような格差の背景には、各国の医療を取り巻く法律や倫理的な社会背景の相違もあり、その解消は容易ではありませんが、ヨーロッパ歯学教育協会は教育プログラムの同一化と臨床実習の緩徐な標準化を模索しています。
 そして、その第一歩として歯学教育に関する情報の共有化を試みています。ヨーロッパ諸国の歯学教育に実情についての詳細な調査報告書がEUのDental Liaison Committeeから出版されています。

参考資料:
ヨーロッパ歯学教育協会:Association for Dental Education in Europe (ADEE).
http://www.linux.odont.ku.dk/adee/

European Community Dental Liaison Committee
Manual of Dental Practice 1995.
Module 1: Legal and Ethical Requirements
Module 2: Dental Services and the organisation of Dental Practice
Module 3: Education and Training

Dental Liaison Committee in the EU.
EU Manual of Dental Practice 1997.
<hr width="630" size="2"> A practical guide to the oral health system and current practice of dentistry in eighteen European countries.