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約20年前にアメリカで医学・歯学教育システムの改革が始まり、ヨーロッパの大学には約10年前から導入され始めました。アジア諸国では旧英国領のオーストラリア、シンガポール、香港などの大学で医学・歯学教育改革がすでに行われています。こうして医学・歯学教育の共通化・基準化(グローバルスタンダード)が進められているようです。
欧州ではEU統合によりEEA圏の医師・歯科医師が国境を越えて自由に移動し診療できるようになりました。そのため、収入のいい安定した生活をおくれる国家への医師・歯科医師の流入が起きています。英国では既に13.65%の歯科医師は英国人ではありません。
こうした状況下で、英国の医学・歯学教育システムは大きく変動しています。1991年に歯学部教育は4年制から5年制となり、1993年から1年間の卒後教育が義務化されました。1998年には卒後資格制度・専門医制度が新しくなりました。そして、現在も歯学部の教育カリキュラムの改革は続けられています。
私は1999年6月1日から3カ月間、ロンドン大学Eastman Dental Institute for Oral Health Care SciencesのOral Medicine講座に滞在し、英国を中心として欧州の歯学教育システムについて調査してきましたので、その概要を報告致します。
講義室での多数の学生を対象とした講義は「伝統的教育法」と呼ばれあまり行われていませんでした。10名以下の少人数グループでの教育が主体でした。
歯学部教育の基本は以下の方針です。
1) Integrated problem based learning (IPBL) and clinical practice based learning (CPBL) ( integrating the study of basic science with clinical teaching)
学生の主体的学習による教育システム“Problem based Learning (PBL)”が実践されていました。解剖学、生理学、生化学などの各教科を個別に教えるのではなく臨床教科と“Integrated (統合)”し、臨床実習と平行して教育が行われていました。
2) Clinical and community oriented skills (CCOS)
歯学部学生は第2学年から臨床実習を開始し卒業までに100人以上の患者の治療を行っていました。地域社会が歯科医療に何を求めているのか、何を必要としているのかを知るために地域診療所での実習が行われていました。
この報告書が英国の歯学教育の概略を知る参考資料になればと願っています。
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